安田和弘写真展「背中の目」

安田和弘写真展「背中の目」

三十六枚撮りのフィルムを最低でも一本撮りきるまで家に帰らない生活、というものを続けている。世話になっていた医者に「日光を浴びるとよい」と言われたからである。酒をやめろとか、規則正しい生活をしろとか、そういうのは勘弁してほしいわけで、なるほどマトモなことを言うと感心した。日記には、こう書いてある。

病院に行く。帰り道、コンパクトのフィルムカメラ買う。KYOCERA TDという。店主のオススメらしく、曇りの日の写りがいいとのこと。ゴツゴツと角ばったのが気に入り買う。「光を浴びる」ということ、それつまり写真になれということ。ただ歩き、撮ることにする。

写真はカメラという機械が世界に働きかけ、生み出されたイメージではない。むしろ、世界を受けいれた結果であり、きわめて弱く受動的なものだ。ただ光を受け入れ、それを定着することは、なにかを掴み取るということではないであろう。だからこそ素晴らしいと思う。写すのではなく、写ってしまうこと。そこに写真が秘術たるゆえんがある。このことが、私たちが写真を撮り、見て、考える理由であるように、いまは思う。

ふと、自分の撮った写真を見ていると、カメラを持ってふらふら歩く、ひどく丸まった自分の背中が見えるときがある。撮っていると、誰かが自分を見ているような視線を感じるときがある。写真には私は写っていない。はて、ふりかえると誰もいない。いつか目が合うことがあるのだろうか。

日々、ただ歩いている。そのために撮っている。

9.10 – 15 (休廊日無し)
12:00 – 19:00

作家在廊日は10,11,12,14,15日となります。

ギャラリートーク
9.14(土)16:00 ~
ゲスト:水原涼(小説家)